函館地方裁判所 事件番号不詳 決定
<表省略>
右被告人等に対する公職選挙法違反被告事件について、検察官から右被告人等の検察官司法警察員に対する各供述調書の証拠調の請求があったので、右請求のうち刑訴法三二二条関係について当裁判所は次のとおり決定する(各被告人相互補強として請求の分は、検察官から刑訴法三二一条一項二号の要件について意見の陳述がなされた後決定する)。
(裁判官 竹田稔)
別紙 一
本調書は被告人桜田が任意出頭の求めに応じて函館中央警察署に出頭し、未だ逮捕状を執行される以前に金野警部から取調べを受け作成されたものである。しかし、右取調の段階において弁護士橋本清次郎は、被告人(当時は被疑者)桜田の弁護人として選任手続をとり且つ必要な協議をなすべく、同警察署を訪ね、岡田警部補に対して同被告人との面接を求めたが、取調中を理由に面接を拒絶されたことが明らかである。憲法三四条刑訴法三〇条の保障する弁護人依頼権は単に弁護人を持つという形式的な権利でなく弁護人の援助を受け自己の利益を擁護する実質的な権利であり、殊に任意出頭の段階において、捜査機関が被疑者の取調べを理由に弁護人との面接を拒む合法的な根拠は全く存しない。任意の取調べであるといえ、被疑者は取調室にあって弁護人の来訪を知るべくもない。しかも、任意に退去しようとするならば、直ちに予め用意された逮捕状の執行を受けることは疑いの余地がない。橋本弁護士との面接を拒んだのは岡田警部補であって、取調官の金野警部ではないが、岡田警部補は金野警部の直属の部下であり、その指揮を受けて本件捜査に専従していたものであって、同一の捜査機関の行為として評価されるべきであり、又金野警部自身に被疑者との面接を求めても到底実現できなかったであろうことは、証人金野春三の供述から明らかである。従って本件調書は、弁護人との面接を妨げることによって被疑者の防禦権を不当に侵害した状況において違法に収集された証拠であって、その瑕疵の重大性に鑑み,証拠能力を有しないというべきである。
別紙 二
1 黙秘権が正当に告知されていない。むしろ黙秘権を行使することを妨げ、或は行使することが不利益を招くと考えさせるような告知をしている。
2 被疑者が否認し、或は捜査官の意図に反する供述をすると大声で叱りつけたり、どなりつけるなどの尋問方法を用いている。
3 証人岡田清松の供述には他の証拠に照らし明らかに虚偽と認められる点があり、取調状況全般にわたり事実を歪曲して供述している疑いが強い。
4 岡田警部補はこれまでに自白を得るためには手段を選ばない取調方法を用いたことがあり、従来の取調態度、その性格、捜査観などからみて、本件においてもかなり強引な自白偏重の捜査を行なったものと考えられる。
以上の諸点からして岡田警部補が被告人の供述するような状況において、被告人を心理的に圧迫し自白を強要した疑いが強く、その結果なされた自白は任意にされたものでない疑のある自白にあたる。